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妄想小説  『レインボー戦隊 のぽレンジャー』 [嵐山星造の短編小説]

2016年 6月

あれから、もう、5年の年月が過ぎた夏の終わり。








彼女は、先日買い換えた、白いVTRに声をかけた。

「今日はちょっと頑張ってもらうわよ。」
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グイィィーン   VTRも、返事をする。












彼女は、久しぶりに川口の料金所のゲートをくぐった。
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白い相棒と東北道を走るのは、初めての事だった。

「きいろいのは、げんきかな~」

親戚の女の子のところに嫁いでいった、黄色いVTRを思い出していた。













しばらくすると、バックミラーにパッシングするバイクが映った。
あの、赤・白・青のCBRは、トリコのぽだ。
彼とは、バイク仲間と同時に、自転車仲間でもあり、ご近所さんなのである。
VTRに並ぶと、トリコのぽは手を上げ、直ぐにスピードを落とし、彼女の後ろについた。
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2台が、蓮田SAに到着すると、既に、赤いCBRが停まっていた。
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朝GOライダーのあかのぽである。
本来、彼は、早朝に走り、11時には帰宅するのだが、今日は彼女のツーリングに参加する為、特別にやんやんちゃんに許可をもらったのだ。



おはようございます。  それじゃ行きましょうか。


三人は、北を目指した。













安達太良SAには、待ち合わせの時間より1時間も前に到着した。
ここで、おでかけしたら1日1ソフトをする。
何で、ライダーは、ソフトが好きなんだろうね。
たわいも無い話をしていると、北陸自動車道経由の、九州組が入ってきた。











カワセミカラーがまぶしい九州組の隊長
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さすらいの廃墟マスター  あおのぽ!!










ディトナを操る長距離ライダー 
植物と神社を愛する大自然の守護神。
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永遠のマドンナ  きいろのぽ!!  











カマキリのような精悍な二つの目が光る!
風のように雲のように自由に駆け巡る、
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麗しの歌姫  みどりのぽ!!















お久しぶりです。
始めまして。

再会あり、初対面あり、挨拶はいろいろだけど、みんなブログで、ずっとお付き合いをしている顔見知りなのだ。

こんなのっていいな。  彼女は、微笑んだ。















そろそろ行きますかっ

あおのぽがみんなに声をかける。

当然先導はあおのぽである。






彼が、好む好まざるに関わらず、なぜか彼からは、先導オーラが出ているのだ。

6台は、東北道をさらに北上する。













宮城県に入ると、蔵王連邦が左手に見え始める。







一同は、東北に来た事を実感しつつ、菅生PAに滑り込む。

遠くからでも、ひときわ目立つ男が、駐輪場で待っていた。
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真っ黒なバトルスーツに身を包んだ、サングラスの男、くろのぽである。
ニヤニヤしながら、到着する6台をビデオに撮っている。












「みんなっ、久しぶりっ   去年の2015ファイナルツー以来ですね~」

もう誰もファイナルツーという言葉に、ツッコミは入れなくなっていた。











さあ、次の仙台南インターから三陸道に向かいますよ。
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そう言ったくろのぽは、先導するのかと思いきや、ちゃっかりあおのぽの後ろについている。






青・黒・赤・白・トリコ・黄・緑

七色のバイクがそろって三陸道を突き進む。









三陸道は、その名前とは裏腹に、ほとんどを山の中を走る高速道路である。










石巻・河北・桃生豊里・登米を過ぎて、志津川ICにさしかかった時、彼女の目に、南三陸町の海の青が
飛び込んできた。
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ここまで来たんだ。   もう少しだっ

彼女の心臓は高鳴った。




自然とアクセルを開ける。
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それを察したあかのぽもペースを上げる。


先導のあおのぽにも、その想いは伝わり、あっという間に終点の気仙沼インターを抜けていた。











彼女が絶望した、気仙沼の壊れた町並みは、そこにはなかった。

近代的なビルが立ち並び、大きな貨物船やフェリーが係留されている。







県道26号線を東に進むと、彼女が一番来たかった場所があった。


気仙沼市唐桑町  
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5年前彼女がボランティアに来た場所だ。




















2ヶ月前、一通の手紙が彼女の元に届いた。







今年は、岩牡蠣が、とても大きく育ちました。

そろそろ旬を迎えます。お友達を誘って是非食べにきてください。














彼女がブログで呼びかけたところ、この7人の食いしん坊が全国から集まったのだ。






「さあ、早く牡蠣を食べようよ」

美食家のあかのぽは、待ちきれない。






「ちょっと1分間だけ待って。」

彼女は、大きく磯の香りを吸い込むと、目を閉じて、耳をすます。








5年前の、ヘドロのにおいや、重苦しい重機の音は聞こえない。



リズミカルな漁船のエンジンと、子どもたちの笑い声が遠くに聞こえる。







彼女は、ずっと待ち望んでいた風景を楽しんだ。






それを黙って見つめる、6人。











「さあっ いこうかっ」


待ってましたと、おどけるトリコのぽ。


母親のように微笑む、きいろのぽ。



黙ってうなずく (T▽T) みどりのぽ。











7人が向かったのは、海鮮小屋。





彼女は、ずっとご主人と話している。

5年前に、ここで知り合った、手紙の主である。








唐桑の牡蠣は、復興の牡蠣。  そして、他県の漁師との絆の牡蠣。

真牡蠣が主体だった唐桑半島だが、震災後、岩牡蠣も取り扱うようになった。

  


  




あの津波からよみがえった唐桑の牡蠣は、生命力に満ち溢れ、心が熱くなる味だった。























「もう少し走ろうか。」


あおのぽの提案に、うなずく6人。





国道45号線リアス式海岸を北上する7台。

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青い海と白い波の風景だけを見ると、誰が5年前の悪夢を信じるだろうか。








「それじゃ、この辺で集合写真を撮って、宿に戻ろうか。」





漁港に入り、セルフタイマーをセットする7人。







「せぇ~のっ」    


ピッピッピッピッピピピピピ


「イデヨ イェンロンッ」  カシャッ









「んじゃ、次は、 せぇ~のっ」   


ピッピッピッピッピピピピピ


「レインボー戦隊 のぽレンジャーッ」   カシャッ










「次は、スパイダーメ~ンでっ  せぇ~のっ」   


ピッピッピッピッピピピピピ


「スパイダーメ~ン」 「私はイヤッ    」    カシャッ










みんなで遊んでいると、係留している小さな漁船から、険しい顔をした漁師が降りてきた。
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つかつか歩み寄ると

「これっ 生で食えっからっ」  といって、ホタテの貝柱を出してくれた。


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漁師が軽トラックで去った方角を見たまま、動かないくろのぽ。


彼は、流れる涙と鼻水をぬぐおうともせず、汚い顔をして、エグッエグッと号泣している。



どうしたの、と問いかけるみどりのぽを、彼女は制して、先に宿に戻りましょうと言った。







夕暮れの漁港で泣いているオヤジをおいて、6台は、唐桑の海に向かいました。
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今日は、これから、震災の日にあわせて、灯篭流しがあるのです。

終わり

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『レインボー戦隊 のぽレンジャー  再会の海』

作  嵐山(あらしやま)星造






参考文献 再び北へシリーズ



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青銀

星蔵さんへ

はじめまして、熊本の青銀といいます。

廃墟ハンター響さんのブログからこちらを知り、ブログを読み始めてはや3ヶ月、毎日更新されてないかわくわくどきどきしながらひらいてます^^

で、今日もひらいたら、うん!こ、これは星蔵さん得意の妄想ねた、たのしんで読まねばと先へ進んだのですが、読み進めるうちにだんだんウルウル状態になりました。

それから、本当にこの妄想のように皆が東北で会える日が来るといいですね。

それでは、これからブログ楽しみにしています。

追伸 
明日は、茗荷原茶寮にはじめていってきます。



by 青銀 (2011-09-10 23:32) 

KENTA

挿絵代わりの写真がなんとも想像しやすく、
地元と相まって感情移入してしまいます。
本当に5年後にはこのような光景が実現できると良いですね。

まだ今日で六ヶ月。
甚大な被災地域はまだまだ復興には程遠いですが、
とにかく一歩ずつ前へ・・・ですね。


>もう誰もファイナルツーという言葉に、ツッコミは入れなくなっていた。

ここマジで吹きました(笑)。
by KENTA (2011-09-11 06:20) 

熊鹿夫婦

5年後には必ずや…その隊列に続くBlogファンがドッと押し寄せるんでないかと( ^ ^ )/□
by 熊鹿夫婦 (2011-09-11 08:00) 

りか

大作でしたね~。楽しく拝見させて頂きました(*^-^*)
灯篭流しがあったんですね~。ニュースで見ましたよ。
震災で亡くなられた方々へのメッセージが書かれた灯篭を見て、
熱いものが胸に込み上げ、泣かずにいられませんでした。
明後日お会い出来ますね。
しかし…待ち合わせ場所が決まっていませんね(笑)まだかよ~(-”-;)
船の中で走るコースを妄想して、会う場所を決めて下さい(^^;)
by りか (2011-09-11 20:58) 

かみさま

あかのぽです(笑)
本当に復興の牡蠣は楽しみです。
とりあえず来月の朝GO!を早目にアップしますね(^_-)-☆
by かみさま (2011-09-12 07:02) 

echo

これは5年後の話しですね。
その頃には蠣も前のようにいっぱい捕れると良いですね。
震災の日にあわせて、灯篭流し、毎年この日を忘れずに思い出しましょう。
そして合掌!!
by echo (2011-09-12 09:41) 

しろのぽ

いやー、とんでもない力作スピンオフありがとうございます。
それぞれの絶妙なキャラ設定は、知ってる人はかなり笑えます。(ワタシそんなお姉キャラぢゃないですケロ)
東北の復興は、妄想じゃなくて数年後の現実にしなきゃいけませんね。

ところで、6月が夏の終わりかよってのは誰もツッコまないの・・・・・・(爆)
by しろのぽ (2011-09-12 19:45) 

hoshizou@フェリー

自分を見つめ直す為、私は北に向かっています
決して捜さないでください…

休みが3日しかとれないので、弾丸ツーです
恒例のメルマガも、今年はなしです。

しろのぽさん
本当は8月末の設定だったけど、しろのぽさんの記事を見て、どうしても牡蠣をだしたくてね。
無理やり岩牡蠣を出したのも、旬の矛盾をなくすため。
そしたら6月が夏の終わりになってた…
全く気付かなかったのは、素人のご愛嬌と言うことで…
by hoshizou@フェリー (2011-09-12 20:24) 

tansta

これ、食えっからの漁師さん登場で、ちょっとウルウル・・
5年後、この妄想小説が少しでも現実となるように、がんばらないと・・

by tansta (2011-09-13 00:10) 

北海 熊五郎

こんばんは、トリコノポです
黄色いのを白くしたんですね・・・・
来月のミーティング、楽しみにしています。

by 北海 熊五郎 (2011-09-13 19:57) 

T2

今頃北の大地ですか?
今回も力作でしたね
そう、こんな風景が東北あちこちで見ることができる
そんな日を信じて!
by T2 (2011-09-13 20:40) 

ANIKI

ほとうに5年後の風景に見えます。
東北沿岸地域に出向くライダー、その表情から復興されたあるべき
姿が感じられます。。
執筆活動、お疲れ様でした^^。
by ANIKI (2011-09-13 21:56) 

uni

5年後・・なんだか希望がわいてきます。
感染力の強いhoshizouさん、希望の力を伝染してください。
by uni (2011-09-15 21:13) 

麗しの歌姫みどりのぽ

あらやだ(T▽T)歌姫て何で知っとるの!?(爆)
by 麗しの歌姫みどりのぽ (2011-09-16 11:15) 

hoshizou

熊本の青銀さん
始めまして。  これからも宜しくお願いします。
茗荷原茶寮や阿蘇に近くて、本当にうらやましい。
私が行く為には、少なくても4日間の休みが必要です。
by hoshizou (2011-09-16 19:47) 

hoshizou

KENTAさん
ありがとうございました。 びっくりしました。
このびっくりについては、後ほどですね・・・
by hoshizou (2011-09-16 19:49) 

hoshizou

熊鹿夫婦さん
妄想小説というか、応援メッセージというか。
でも、きっと実現すると思われる、一種の未来日記です。
by hoshizou (2011-09-16 19:51) 

hoshizou

りかさん
灯篭流しの灯りって、先祖の方を供養する灯りです。
今年は違いますからね。子どもに向けたメッセージなんて、悲しくて見れないです。
by hoshizou (2011-09-16 19:54) 

hoshizou

あかのぽさん
かみさまなら、唐桑日帰りコースですね。 
実現させましょう。
by hoshizou (2011-09-16 19:55) 

hoshizou

会長
エコーツーで、土日唐桑半島復興海鮮ツアー  マジでやれそうですね。
尾根遺産が多ければ、仕事終了後向かいます。
by hoshizou (2011-09-16 19:58) 

hoshizou

しろのぽさん
頑張っているしろのぽさんをもっともっと美化したかったけど、うそ臭くなるので、
全てしろのぽさんが、やりそう・言いそうな事ばかりにしました。
くろのぽは、ご一緒しますよ。
by hoshizou (2011-09-16 20:02) 

hoshizou

tanstaさん
それじゃ、ある程度復興したら、仙台朝GOの行先は、唐桑ですね。
by hoshizou (2011-09-16 20:04) 

hoshizou

トリコのぽさん
のぽレンジャーのネーミングの為には、彼女は白いバイクじゃないといけないのです。
夜中に、ごそごそ画像処理をしてました。
by hoshizou (2011-09-16 20:06) 

hoshizou

T2さん
これは、妄想じゃない、未来日記です。
しろのぽさんが、ボランティアじゃなくて、遊びで唐桑を訪れる日が早く来ればいいなと思ってます。
by hoshizou (2011-09-16 20:09) 

hoshizou

ANIKIさん
執筆という大それたことじゃないのですが、夢や目標は具体的なほうが
叶いやすいと思ってます。
ほんと、みんなで美味しい牡蠣を楽しみに行きたいですね。
by hoshizou (2011-09-16 20:12) 

hoshizou

uniさん
希望の力なんていわれると、その気になってしまいます。
調子に乗せたら、天まで昇り続けます。周りの迷惑顧みず!!
by hoshizou (2011-09-16 20:13) 

hoshizou

麗しの歌姫みどりのぽさん
北海道まで行っちゃうくらいだから、マジで東北はこれそうです。
門司から大阪までフェリー  大阪から名古屋までちょっと走ってまたフェリー
あっと言う間に宮城ですよ。

by hoshizou (2011-09-16 20:15) 

リュカ

ほんとうにこんな日がくると良いですね(^^)
美味しいホタテに美味しい牡蠣!
そしてうるうるする、しろのぽさん♪
by リュカ (2011-09-18 17:15) 

hoshizou

リュカさん
リュカさんは、しろのぽさんへのコメントをみて、私と同じ感じ感想を持った
ステキな尾根遺産と確信しました。
(それは、単に自分もステキな男といいたいだけ・・・・ミタイナ)
by hoshizou (2011-09-19 07:59) 

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